音楽番組
礼子さんが遊びに来ると、「どうしても頼みたいことがあるの」と言い出しました。
弟さんがテレビの音楽番組に出演することが決まったのと話しを始めました。
パソコンを使って打ち込みで作った曲のテープを送ったら、テレビ出演が決まったということでした。
しかし、弟さん一人でテレビにでても絵にならないので、なんか人数を集めてバンド演奏にしてほしいとテレビ局の人に言われたそうでした。
弟さんはいま大学4年で、他の学生は就職活動が忙しくてとてもテレビ出演をしている暇はないし、そもそも頼めるような友達もいないということでした。
礼子さんの話しでは弟さんは高校の時からもうずっと引きこもりで、大学に入学はしたものの、クラブにも入らず友達も全然いないという話しでした。
毎日部屋に閉じこもってパソコンで音楽を作って大学生らしいことは何もしていないと言います。
私はせっかくのチャンスだしなんとかしてあげたいと思って、テレビに出演することにしました。
打ち合わせでスタッフの人と相談すると、「なんでもいいから、ともかく目立つようにしてください」と強く言われました。
それで私と礼子さんは高校のに短いスカート姿でテレビに出演することにしました。
無事収録も終わって、私だけ先に帰る事にしました。
控え室は他の出演者で混雑していてとても着替えが出来そうにはありませんでした。
私はしかたなく姿のままで帰りの地下鉄に乗りました。
ちょうど地下鉄が入ってきて、入り口のドアの近くに立っていると、ちょうど反対側に姿で極端にスカートを短くした女の子を見つけました。
あんなにスカートを短くしてにでも遭わなければいいのにと思って見ていると、のデザインはなんだか似ていました。
よくよく見ると、同じ高校の制服でした。
私と同じ高校の後輩だと分かって私はびっくりしました。
私がいたころは、こんなにスカートを短くしたりする生徒はいなかったのに、随分学校も変わってしまったようでした。
も私に気が付いた様子でしたが、同じ学校の生徒と思いこんだ様で特に気にはしていない様子でした。
のすぐ後ろの男がなにか変な動きをするのが目に入りました。
腰を押しつけるようにの後ろから手を押しつけているようでした。
やっぱりと私は思いました。
はに遭っているのに間違いないようでした。
やがて駅につくと、いったんドアの外にでた男がまたの回りに集まってきました。
今度は数人の男達がを取り囲み、回りから見えないようにしました。
私はこれは大変だ、私の後輩がに触り放題にされていると思いました。
私は降りる駅に電車が着いても、降りずにの様子を確かめる事にしました。
駅が郊外に近づくと、しだいに乗客も減って行きましたが、男達はを取り囲んで逃げないように押さえつけていました。
地下鉄はやがて地上に出ると、外の景色は小さな山も見えてきて郊外の終着駅に着きました。
男達はを取り囲む様にして改札口を通ると、駅前の商店街を歩き始めました。
私はこっそりと後をつけることにしました。
しばらく歩くと辺りは街頭の明かりも暗くすぐ横道に入るとの看板が見えてきました。
その時ちょうど後ろからタクシーが私達を追い越すと、の前で止まりました。
客のカップルを降ろすと、ドアが閉まりました。
その瞬間にが男達の手を振り払って駆け出すと、すごい勢いでタクシーの所まで走ると、すばやくタクシーに乗り込みました。
すぐにタクシーが発車すると、私のすぐ脇を通り過ぎて行きました。